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企業の理論(T,ヴェブレン著)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2017.06.01

書名 「企業の理論」
著者 T,ヴェブレン
訳者 小原 敬士
出版者 勁草書房
出版年 1965年10月
請求記号 H735.1/79
Kompass 書誌情報

購入してから30年以上もの間、つねに傍らに置いてある本にT.ヴェブレン著小原敬士訳『企業の理論』(勁草書房)がある。「近代文明の物質的外枠は産業体制であり、この外枠に生気をあたえる指導力は営利企業である。」で始まり、「営利企業は結局は敗北の運命をもっている。なんとなれば、それは、いずれのものの興隆とも両立しないからである。」と締めくくられる制度派経済学の古典(原著は1904年初版)は、無形資産を中心的テーマとする管理会計研究者の自分に会計学の著作以上の影響を与えてくれた。中でも最も大きな影響は、「のれん」に関するものである。2000年以降、管理会計研究の重要課題として、インタンジブルズ(intangibles:無形の資産)の問題がクローズアップされるようになったが、以前から管理会計における無形資産の問題を取り扱ってきた自分にとって、それはヴェブレンが『企業の理論』において言及した「のれん」論の焼き直しにしか見えなかった。例えば、以下のような記述は、「いっそう広い意味に解されたのれん」を「インタンジブルズ」に言い換えれば、そのまま今日でも通用するものである。「いっそう広い意味に解されたのれんは、確立された慣習的業務関係、正直な取引の評判、営業権や特権、商標、銘柄、特許権、版権、法律や秘密によってまもられている特殊工程の排他的な使用、特定の原料資源の排他的な支配といったようなものをふくんでいる。」(第六章 現代の企業資本)。新しい本に新しいことが書いていることを否定するつもりはないが、百年以上前に書かれた本の中に今日でも通用する記述が多々あることも事実である。そうした記述を発見することも読書のひとつの楽しみであることを、学生には是非知ってもらいたい。

副学長 猿山 義広

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