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黒牢城(米澤穂信著),氷菓(米澤穂信著)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2022.04.01

書名 「黒牢城」
著者 米澤 穂信
出版社 KADOKAWA
出版年 2021年6月
請求番号 913.6/1908
Kompass書誌情報

書名 「氷菓」
著者 米澤 穂信
出版者 角川書店
出版年 2001年11月
請求番号 080/22-1833
Kompass書誌情報

「黒牢城」は2022年に直木賞を受賞した米澤穂信氏の最新作である。米澤氏はミステリーというジャンルを軸に「謎?時代?人間」という要素を配し、独自のビターな世界を構成する稀代のヒットメーカーだ。「黒牢城」では、織田信長に謀叛を起こした荒木村重が籠城する有岡城を舞台に、村重に幽閉され地下牢に閉じ込められている黒田官兵衛を安楽椅子探偵に据えて話が進む。戦国時代(あるいは戦争)とミステリーをかけ合わせるという新境地が披露されており、その本領を存分に発揮されている。

一方の「氷菓」は2001年に刊行された米澤氏のデビュー作である。学園の青春群像劇とミステリーをかけ合わせた、ある高校の日常生活の中で起こる謎を解く「人が死なない」ミステリーだ。青春時代特有のほろ苦さ、甘酸っぱさを噛みしめながら、ゆっくりとしたテンポで進む物語は<古典部シリーズ>として続刊されるとともに、アニメ化、コミック化、実写映画化など各方面で展開され、長く愛されている。

約20年の時間を経て、米澤穂信氏の紡ぐ物語は様々な舞台に広がり、内容は重厚かつ緻密になっている。しかし、その中心にはミステリーが据えられており、一貫して独自の世界観を醸し出している。また、人間のあり方に対する視点も独特であり、合理的に割り切ることができない「ままならなさ」や「不条理さ」を含んでいる。一読者として作者と同じく歳を重ね、その作品を楽しむことができるこの上ない喜びを感じている。皆さんには、ともに年月を積み重ねていけるような作者に出会われることを期して紹介する。

経済学部 准教授 大前 智文

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